家を買うときに多くの方が利用する住宅ローン。住宅ローンを利用する場合、どれくらいのお金を借りて、毎月どれくらいの金額を返済するべきなのか、全く想像がつかないという人もいるでしょう。そこでファイナンシャルプランナー2級の資格を持つ筆者が、家計と住宅ローンの最適なバランスや、住宅ローン借入時の頭金の注意点などを詳しく説明いたします。
目次
住宅ローンとは?
そもそも住宅ローンってなに?
住宅ローンとは、本人や家族が住居を購入するために、銀行や信用組合などの金融機関からお金を借りることをいいます。住宅ローンに含まれるものは、新築戸建てや中古戸建、マンションや土地の購入はもちろん、家の増築、改築での借り入れも含まれています。
住宅ローンの借り入れ金額の目安は?
住宅ローンは金融機関への借金となるので、借りた金額とその利息を毎月返済していくことになります。そのため、住宅ローンの借入額は、生活をしながら毎月返済できる金額を考えなければいけません。そこで借入額検討地のポイント・目安となるのが、現在の家賃です。生活していく上で、家賃は毎月支払っていることでしょう。現状、無理なく支払えているということは、それと同じくらいの金額であれば、住宅ローンでも支払えると考えるのが自然です。借り入れ金額を考えるとき、まずは現在の家賃と同額程度鵜を目安にしてみてください。その他にも家賃や年収からどれくらい住宅ローンとして借り入れができるのか考えていきましょう。
住宅ローンの借り入れ可能額は家賃や年収から試算しよう
家賃から見る借り入れ可能額
まず家を買おうとするときに、費用を考えずにマイホーム探しをする方はおそらくいないでしょう。まずはだいたいの予算を立て、そのうえで戸建てにするのかマンションにするのか、場所はどうしよう……などと考えていきます。
その最初の段階である予算を立てるとき、便利なのが金融機関のホームページで紹介されている「住宅ローンの借り入れ可能額シミュレーション」です。これを使えば、毎月の返済額から借り入れ可能額が把握できます。
使うシミュレーションツールや条件設定で結果は少しずつ違いますが、ここは一例として実際にシミュレーションした結果を表にしてみました。ボーナス月の返済なし、一般的な借り入れ期間である35年、金利(住宅ローン借り入れ金額に対する利息のこと)は2.5%、返済方式は元利均等返済(元金と利息を合わせて均等に返済していく方法)としています。
月々の支払からみる借り入れ金額
月々の支払金額 | 借り入れ可能額 |
---|---|
5万円 | 1,398万円 |
6万円 | 1,678万円 |
7万円 | 1,958万円 |
8万円 | 2,237万円 |
9万円 | 2,517万円 |
10万円 | 2,797万円 |
11万円 | 3,076万円 |
12万円 | 3,356万円 |
たとえば家賃が7万円のところにお住まいの場合、35年ローンで金利2.5%、元利均等返済を選択すると1,958万円の借り入れ金額となります。
賃貸の場合、家賃だけでなく駐車場代や共益費などがかかることもあるので、そういった固定費も含めて月の返済額を考えるとだいたいの目安が探れるでしょう。
年収から見る借り入れ可能額
先ほどは家賃から借り入れ可能額を算出しましたが、次は年収から見る借り入れ可能額をチェックしていきます。この方法は借り入れ金額の上限を把握するのに便利です。
たとえば、以下の表はボーナス月の返済なし、借り入れ期間は35年、金利は年2.5%、返済方式は元利均等返済とした場合のシミュレーション結果を表にしました。
年収からみる借り入れ可能額
年収 | 借り入れ可能額 |
---|---|
300万円 | 2,097万円 |
400万円 | 3,263万円 |
500万円 | 4,079万円 |
600万円 | 4,895万円 |
700万円 | 5,711万円 |
800万円 | 6,526万円 |
900万円 | 7,342万円 |
1,000万円 | 8,000万円(※) |
※シミュレーションした金融機関の貸付上限が8,000万円のため
通常年収400万円の方の場合、上記のシミュレーション結果では3,263万円の借り入れが目安となります。
年収から借り入れ可能額を見るときは、世帯全体の税込み年収で考えるのが一般的です。しかし税込み年収だと手取り金額との差が生まれてくるので、毎月の支払金額が多いと感じてしまうこともあります。もしリアリティのある数字が知りたいという人は、手取り年収で考えることをおすすめします。
家賃?年収?借り入れ可能額はどっちで考えればいい?
将来的に年収がほとんど変化しないという人は、家賃から借入可能額を考えるほうがよいでしょう。逆にこの先、年齢とともに年収が増えていく可能性が高い人は年収から見て購入時期を考えるのも良いかもしれませんね。
頭金は入れるべき?それぞれのメリットとデメリットを考えよう
頭金を入れる場合のメリットとデメリットは?
住宅ローンを借りるときによく議論されるのが頭金の話です。頭金とは、住宅ローン契約などで最初に支払うある程度まとまったお金のことをいいます。具体的には、3,000万円の家を購入しようとした場合に、これまで貯金しておいた300万円を使い、残りの2,700万円を住宅ローンで借り入れるというものです。
では、頭金は入れることで得をするのでしょうか?
頭金を入れるメリットは月々の返済額が減る
頭金を入れれば借り入れ金額が減るので、毎月の返済額が減るのがメリットです。
頭金を入れるデメリットは貯金が減る
もし貯金を全部住宅購入の頭金に充ててしまうと「貯金がなくなり、急な病気で働けなくなった」など急な出費が発生したときに、お金の工面に困ってしまうという点がデメリットです。
頭金を入れないメリットとデメリットは?
最近は低金利なこともあり、頭金なしで家を買う人も増えているようです。逆に頭金を入れないことで得をすることはあるのでしょうか?
頭金を入れないメリットは貯蓄が減らない
まとまった頭金を入れず、ほぼ全額住宅ローンで借り入れをした場合のメリットは、貯金を減らさず住宅購入ができるということです。また貯金がたくさんなくてもある程度の年収があり、金融機関の審査が通れば購入できるので、貯蓄額の少ない若い世帯に需要があるといえます。しかしメリットだけではありません。
頭金を入れないデメリットは月々の支払いが増えたり期間が長くなる
住宅ローンの頭金を入れない主なデメリットは借り入れ金額が多くなることです。借り入れ金額が多くなれば、毎月の返済額が多くなったり借り入れ期間が長くなったりします。子どもが増えた、年収が減少したなど家庭の状況が変化するようなことがあった場合に、返済が滞る、返済できないなどと困ることが発生するかもしれません。
住宅ローンの最適バランスは月収の25%?30%?
月収における住宅ローンの割合はどうやって考える?
ここまでの話で、住宅ローンの目安は現在の家賃でも考えられると説明してきましたが、一般的に家計と家賃の理想的な割合は月収の30%程と言われています。では、今の家賃と収入の関係はどうでしょうか?家賃が月収の30%を超えている人の場合でも、少し見直した方が良いという人、ほかの支出を抑えているので問題はないという人、さまざまな方がいるでしょう。それぞれの家庭によってどこに重きを置くのかで違いますが、家計と住宅ローンの最適なバランスを年収600万円の家庭でシミュレーションしてみました。
年収600万円の方の家計と住宅ローンのバランスをシミュレーション
年収600万円というと、手取り金額は約472万円です。ボーナスは含めず単純に12カ月で割ると、毎月の手取り金額は約39万円になります。その30%となると、11.7万円です。これを元に、住宅ローンの借り入れ可能額をシミュレーションしていきます。
<月々の手取り月収の30%の返済とした場合>
月々の支払額の目安は11.7万円ですが借り入れ可能額はいくらでしょう
毎月の返済額 | 借り入れ可能額 |
---|---|
10万円 | 2,797万円 |
11万円 | 3,076万円 |
12万円 | 3,356万円 |
住宅ローンの支払い比率を下げたいという人は、月収の25%くらいにおさえるのもおすすめです。
<月々の手取り月収の25%の返済とした場合>
月々の支払額の目安は9.75万円ですが借り入れ可能額はいくらでしょう
毎月の返済額 | 借り入れ可能額 |
---|---|
8万円 | 2,237万円 |
9万円 | 2,517万円 |
10万円 | 2,797万円 |
月収に占める住宅ローンの比率で現実を
月収における住宅ローンのバランス・割合から、月々の返済金額を割り出し、そこから住宅ローン借り入れ可能額を考えていく。そうすることで、家を買いたいという漠然としたイメージから、どれくらいの価格のどんな家に住みたいのか想像できるようになったのではないでしょうか。現実を知ることでどれくらいの貯金が必要だとか、注文住宅にするのか建売住宅にするのかなど、さらに詳しく計画を立てられるようになります。
住宅ローンを組む際に注意するポイントとは?
住宅ローンを組むときの3つの確認ポイント
これまで住宅ローンと家計とのバランスについて説明してきましたが、住宅ローンを組む際に注意しておきたいポイントを紹介していきます。注意するポイントは3つ。
(1)頭金の金額は大丈夫?
あらかじめ住宅購入用として貯蓄とは別に分けて貯めていれば問題ないでしょうが、そうでなければ注意が必要です。まずは頭金が貯金のどれくらいの割合を占めているのか考えましょう。
ここがポイント!「貯蓄を残すか考えよう」
病気や事故などで万一働けなくなり収入がなくなるなど、残りの貯金でしばらく生活できるのか判断する必要があります。残す金額はできれば年収1年分、あるいは月収6カ月分。最悪でも3カ月分は持っておくと安心でしょう。頭金を支払うことで、「借り入れ金額が減ったけど貯蓄がなくなった」では本末転倒です。支払う金額と残しておく金額のバランスを考えましょう。
(2)借り入れ限度額まで借りて大丈夫?
「欲しい家が見つかったものの価格が少し高い、でも借り入れ限度額ギリギリまで借りれば買える」という場合は、少し立ち止まって考えてください。欲しい気持ちはわかりますが、万一年収が減って生活に変化が起きたときに、返済ができなくなってしまうことがあります。
ここがポイント!「借入額は無理しないで返せる額」
収入の減少などの万一を想定して、無理なく返済できる金額で住宅ローンを組むことをおすすめします。実際には限度額の8割ほどで借りている人や限度額いっぱいまで借りている人など世帯によってさまざまですが、万一に備えるとなると、世帯全体の貯金と今後の年収の変化を考慮して、毎月の返済額が家計の25%におさまる額で借り入れする方が良いでしょう。
(3)ライフプランは大丈夫?
ライフプランとは今後の人生設計のことです。子どもが増えるとそれだけ教育費がかかったり食費が増えたりと出費が増えます。また、自分で事業をしたいと考えると収入に変化が起こるでしょう。
ここがポイント!「ライフプランシミュレーションをしよう」
今後の人生設計をどうしたいのかを考えることがライフプランシミュレーションです。住宅購入を考えるときは、ライフプランシミュレーションをして、何年後の何歳の時に出費が増えるのか、この先の将来どんな人生を送りたいのか考えましょう。その上で、住宅購入するベストな時期を考えるのもひとつの方法です。
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しかしその決断が吉と出ることもあれば、凶と出ることもあります。実際に購入したあとに返済に行き詰って、負債を抱えてしまったという人もいます。逆に物件の価値が上がって高値で売れ、新しい物件を手に入れたという人もいます。
住居の購入はタイミングも必要ですが、一般的には住み続けるためのものなので、毎月の返済のことも念頭に入れて考えなければいけません。気に入った物件に出会ったときこそ冷静になり、購入についての見通しを立てることが大切です。経験豊富な不動産会社に、家計に占める住宅ローンのバランスや住宅価値の今後の見通しなどを相談するのもおすすめですよ。